気を使う返信こそ、AIに三案出させる

仕入先から、値上げのお願いが届いたとします。

すぐに返事をしないといけない。でも、ただ受け入れれば利益が削られるし、強く断れば長い付き合いにひびが入る。こちらの事情も、角を立てずに伝えたい。こういう返信は、一通書くのに驚くほど時間がかかります。書いては消し、を繰り返して、気づけば半日たっていた、ということもあります。

取引先へのお詫び、支払い条件の相談、納期の延長のお願い。中小企業の社長の机には、この「気を使う返信」が毎週のように回ってきます。ここで効くのが、AIに「方針の違う三つの案」を出させる使い方です。

一案ではなく、三案を頼む

AIに返信を書かせると、たいていは無難な一通が返ってきます。悪くはないのですが、気を使う場面では「この方向でいいのか」が一番の悩みなので、一案だけでは決めきれません。

そこで、最初から方針を分けて頼みます。値上げのお願いへの返事なら、たとえばこうです。

  • 受け入れる案(関係を優先し、時期や今後の見通しだけ確かめる)
  • 条件付きで受け入れる案(数量や支払い条件など、こちらの条件と組み合わせる)
  • 値上げ幅を抑えてもらう案(こちらの事情を伝え、幅や時期の相談を持ちかける)

三つ並ぶと、文面の良し悪しより先に「うちはどの方針で行くか」を考えられるようになります。決めるべきことが文章の言い回しから方針に移る。これが一番の効き目です。

渡すのは「方針」と「事情」

いい案を出させるコツは、AIに丁寧な文章を頼むことではなく、判断の材料を渡すことです。

  • 相手との関係(長い付き合いか、まだ取引が浅いか)
  • こちらの事情(利益がどのくらい苦しいか、代わりの仕入先はあるか)
  • 守りたいこと(関係、利益、納期、どれを一番に置くか)

これを箇条書きで渡し、「この三つの方針で、それぞれ返信案を作って」と頼みます。言い回しは、慎重なもの・普通のもの・前向きなものと、温度を変えて出させるのも手です。

選ぶのも、送るのも人

三案を出させたら、あとは人の仕事です。どの方針で行くかは、取引の歴史や今後の計画を知っている社長にしか決められません。選んだ案を、自分の言葉に少し直してから送ります。

AIが書いた文面を、そのまま送らないことも大事です。相手との過去のやりとりや、電話で話した内容まではAIは知りません。事実と違うことや、言わなくていいことが混ざっていないか、最後に一度だけ目を通します。

うちならこう使う

自社でやるなら、まずは仕入先からの値上げや納期のお願いへの返事から始めます。届いたら、相手との関係とこちらの事情を三行ほどで書き出して、三つの方針の案を出させる。その中から方針を決めて、担当者か社長が整えて会社名義で送る、という流れです。

慣れてきたら、取引先へのお詫びや、こちらからの条件の相談にも広げます。どれも「どう書くか」より「どう出るか」で悩む返信です。三案を並べて方針を先に決める。このやり方が身につくと、気の重い返信に半日取られることが減っていきます。