問い合わせの一次対応はAIチャットに。判断は人が持つ
ネットで物を売っていると、問い合わせの多くは似たような中身になります。
「注文した商品はいつ届きますか」
「この色の在庫はありますか」
「このサイズで合いますか」
一つひとつは短いやりとりです。でも数が積み上がると、担当者の一日はこの返信で埋まります。夜や週末に来た問い合わせは翌営業日まで待たせることになり、その間にお客様が他のお店へ移ってしまうこともあります。
こうした「数は多いが、聞かれることは似ている」問い合わせを、まずAIチャットに受けさせる使い方が、ECの現場で広がっています。その型を整理します。
AIチャットに任せられること
AIチャットとは、お店のサイトやメッセージの窓口で、お客様の質問にAIが文章で答える仕組みです。いま任せられることは、おおむね次のようなものです。
- 注文状況の案内(いまどこにあるか、いつ届く見込みか)
- 在庫・サイズ・仕様など、商品についての質問への回答
- 外国語での問い合わせへの対応
- 夜間・休日も含めた、時間を問わない一次回答
ポイントは、AIが「よくある質問の答え」を返すだけでなく、そのお客様の注文やカートの中身を踏まえて答えられることです。「いつ届きますか」は本来、注文ごとに答えが違います。注文の情報とつながっていれば、「〇〇様のご注文は、いま発送準備中です」という、その人向けの返事ができます。
人が引き取るべきこと
一方で、AIに任せてはいけない問い合わせもあります。
- 返金をめぐるやりとり
- 商品の破損や不具合の申し出
- 怒っているお客様、事情が込み入っている相談
こうした案件は、AIが受けたら人に回す決まりにしておきます。もう一つ大事なのは、AIは間違った答えを、もっともらしく返すことがあるという点です。在庫や納期を自信満々に間違えれば、お客様の信用を失います。
だから最初は「AIが下書きを作り、人が確認してから送る」形から始めるのが安全です。確認しながら使っていくと、「この種類の質問なら任せて大丈夫」という範囲が見えてきます。その範囲だけを、少しずつ自動返信に切り替えていけばよいのです。
始める前に、問い合わせを仕分ける
いきなり仕組みを入れる前に、効く準備があります。これまでの問い合わせを見返して、種類ごとに仕分けることです。
「配送」「在庫・商品」「返品・交換」「支払い」。だいたいこのくらいの型に分かれるはずです。そのうち件数の多い型から、質問と答えのセットを整えていきます。この整理はそのままAIの答えの土台になりますし、仮にAIを入れなくても、返信の雛形として役に立ちます。
あわせて、お客様の情報をどこまでAIの仕組みに渡すのかも決めておきます。使うサービスが、預けた情報をどう扱うのか。導入前に確かめておくべき点です。
うちならこう使う
自社でやるなら、まずは受注窓口に来る「配送状況」「納期」「仕様」の質問から始めます。ここは答えが注文や商品の情報で決まるので、AIの下書きの精度が上がりやすいところです。
進め方は、AIが下書きを作る、担当者が確認して送る、の二段構え。返金・破損・クレームの気配があるものは、AIの下書きを使わずに担当者が最初から対応する決まりにします。
狙いは、問い合わせの返信をゼロにすることではありません。似たような返信に取られていた時間を、見積もりや取引先との交渉、常連のお客様への気配りといった、人が頭を使うべき仕事に戻すことです。小さく始めて、任せて大丈夫だった範囲だけ広げていく。そのくらいの距離感で付き合うのがよさそうです。